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髪の毛の事

今から考えたら、何でそんな事がまかり通っていたんだろうって思うけれど、僕が通っていた中学校の校則に、「男の子は丸坊主」というのがあった。戦争中の日本の話ではない。僕はまだ21歳だから、大体7年くらい前の話だ。信じ難いとしか言いようがないけれど、神戸市の公立中学校に通う男子生徒は、みんな丸坊主だったのである。

ところが僕が中学三年の時、一枚のアンケートが配られた。「丸坊主についてどう思うか」ってのがその主旨だった。勿論卒業を間近に控えた僕達三年生は、「大賛成」「これからも続けるべき」という意見を書いた。面白いのは、不良だった奴らが「非行を防ぐ」って理由で賛成していた事だ。でも結局、一二年坊主ども(まあ、三年も坊主だったが・・・)が大反対したので、あくる年からその校則はなくなった。

まぁそういう経過をたどったので、高校に入ってからの僕は、妙に髪型に気を入れるようになった。これも今から考えたら信じられないけれど、毎月散髪に4千円も使っていた。しかも通っていたのは床屋じゃなくて、美容室である。三ヵ月に一回20ドルで散髪している今とは大違いだ。で、その髪型だけれども、いわゆる「ツーブロック」で、ドライヤーなんか丁寧にしちゃったりして、もうなんか、とても格好良くなってしまったのだ(丸坊主の時に比べてね)。

しかし問題は部活だった。僕は高校の時は柔の道(やわらのみち)を志していたのだけれど、柔の道を志す者は丸坊主にしなければならないという、柔道界での暗黙の了解が漂っていた。まぁ、僕の通っていた高校はとても自由な学校だったので、柔道部員と言っても別に怖い人の団体って訳じゃなかったので良かったのだけれども、試合の時には、「何よあのチャラチャラした人。押さえこんじゃえ」と思われていたに違いない。

でもさすがに自分自身「これはいかんやろ!」って思ったのは、パーマをあてた時である。そのパーマも驚くほど格好良く決まったのだけれども、柔道で汗をかいたら、もう大変。くるくるくるぅってなって、「お前アホか?」って感じの頭になってしまったのだった。

続く
 

2/4/99

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