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アメリカの自動販売機について

昨日学校で、お菓子の自動販売機をぼこぼこに蹴っている兄ちゃんを見かけた。どうやらお金を入れたのにお菓子がひっかかって落ちて来ないのだ。その兄ちゃん、初めは揺さぶっていたぐらいだったんだけれども、その内冗談じゃなくて飛び蹴りを食らわしていた。見かけは普通の兄ちゃんなんだけれど、余りの悔しさで切れてしまったようだった。その時たまたま通りかかった僕に「いやぁまいっちゃったよぉ」という苦笑いをして来たので、"Yeah, I know..."とだけ答えておいた。「たかだか60セントのドリトスに飛び蹴りはないやろ」って思ったけれど、まぁ彼の気持ちは分からないでもない。彼にしてみたら、「うおー、お、俺のドリトスがぁーーー!!!」って感じの興奮状態なのである。

アメリカの自販機(ちなみに自動販売機の事をアメリカでは vending machine と言う)ではこういう事はよく起こる。とにかく性能が悪いのだ。この兄ちゃんのようにお金を入れたのにお菓子を落としてくれないとか、コーラの自販機がお札を食べてしまって「ゲップぅ」って言ったり、もう本当に厄介な機械達なのだ。

しかし何と言っても極めつけは、アイスクリームの自動販売機。それがどこにでもあるのかどうかは知らないけれども、うちの大学にあるアイスクリームの自販機はとにかくすごい。何がすごいかと言うと(うーん、うまくいい表わせるだろうか?)、それのアイスを取り出す仕組みがすごいのだ。順を追ってアイスを食べたい雄一郎君と、アイスを売っているベンディングマシーン君の一連の動きを追ってみよう。

まず雄一郎君がお金を入れる。平均して1ドル50セントなので、コーラ一本65セントに比べると随分高い。で、雄一郎君は買いたいアイスのボタンを押す。ここまでは日本にある自販機君と変わらない。問題はここからだ。ウイーンと言いながらベンディングマシーン君が動きだす。まず冷凍庫の蓋を開けるのだ。ちなみに彼の一連の動きは外から丸見えである。次に上から垂れ下がっている筒が平行移動は始める。そしてお目当てのアイスクリームの上に来ると、下に動き出す。ちょうど日本にある UFO キャッチャーみたいな動きだ。で、とうとう彼の本領発揮である。アイスの所まで下がると、UFO キャッチャーのようにアイスを掴みあげるのかと思いきや、なんとなんと、彼はヴォーというすごい勢いでアイスを吸い出すのだ!そう、筒はなんと掃除機だったのだ!!!

つまりそのベンディングマシーン君の最も重要な仕組みは、その中にある掃除機で、ヴォーという音を立てながらアイスを吸い上げ、そしてそのままユラユラとアイスの取り出し口の方に動いて、そこで掃除機のスイッチを切って、ポトっと落とすという事なのだ。何たる阿呆な仕組みだろうか?こんなの夏休みの工作みたいである。

この掃除機が動いている間、雄一郎君は緊張の真っ只中にある。何故かというと、掃除機が運んでいる途中で、アイスを落としてしまう事があるからだ。UFO キャッチャーをやったことがある人なら、この僕の緊張感を分かって貰えるだろう。あともう少し、あともう少しってところで、ポトって落としてしまうのだ。「うおー、お、俺のアイスがぁーーー!!!」って感じである。

まぁしかし、そこは一応プロの造っているマシーンである。落としてしまったら、ちゃんともう一回アイスを吸い上げに行ってくれる。とは言え、よくぞこんなヘボイ機械があるものである。日本では考えられないほど、アメリカの自動販売機はヘボイ。コンピューターを造る技術で、自動販売機ぐらい何とかならないのだろうか?

3/23/99

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