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数か国語を操る人について

僕はアメリカに来てすぐの時は、まったく英語を話す事が出来なかった。本当に挨拶するのがやっとで、気の利いた事一つも言う事が出来なかった。今でも苦手であるが、そうは言っても最初に比べると随分うまくなったものである。

来て半年ぐらいの時に経験した事なんだけれど、英語がまだ読めない、書けない、聞けない、話せないという最悪の四拍子に加えて、母国語である日本語、もしくは関西弁が相当駄目になってしまった。読んだり聞いたりは受け身なので全然平気なんだけれど、まず最初に漢字が書けなくなって、そして、うまくボケやツッコミができなくなってしまったのである。これは最大のピンチ!!英語が駄目な上に日本語までだめになってしまったら、「むっちゃやばいやん」的状態である。

で、今回の題は「数か国語を操る人について」である。アメリカにいると、二か国語、三か国語を話す事が出来る人は、当たり前のようにぞろぞろいる。この僕でさえ、まあ下手なりにも日本語と英語を喋る訳だから二か国語である。他の留学生も、母国語と英語でバイリンガルという事になる。その上にもう一つ勉強した人ならば、三か国語を喋る訳だからトリリンガルである。アメリカ人だって、英語に加えてスペイン語やフランス語を喋ったりする。結構日本語を喋る奴もいっぱいいる。

しかし驚くべきは、五か国語や六か国語を操る人である。中にはそれ以上って人もいるであろう。僕が今まで会った中で一番の人は、この前フロリダに行った時に会ったロシア人の女の子である。彼女はまだ20歳なんだけれど、なんとフランス語、スペイン語、ドイツ語、イタリア語、英語、そしてロシア語の使い手であって、アラビア語まで少しなら出来るというから驚きである。脳の働きについて大学院で勉強していて、中国の漢方に興味があるらしく、「中国語は一年で覚えられるかしら?」なんて、無茶な事を言っていた。彼女なら出来そうなのが怖い。

アジア人の中にも凄い人がいる。最近会った韓国の女の子で、英語、日本語、中国語(マンドリン)、そして韓国語をほぼ完璧に使う子がいた。ドイツ語も、昔住んでいたそうで、少しぐらいなら解かるようである。

では何故そんな事が出来るのであろうか?それはやはり、生まれ育った環境が第一の理由で、第二が才能、第三が性格だと思う。僕みたいに、アメリカ出発の日に「初めて飛行機に載るの」なんて言っていた人間で、その上恥ずかしがり屋な性格だと、なかなか言語の習得は難しいのである。

第四の理由は努力なんだろうけれど、努力でどれだけ、第一、第二、第三のギャップを埋められるだろうか?でも、だからと言って努力を怠ってしまったら、本当に何も無しになってしまうのが、凡人の辛い所である。これは言語だけじゃなくて、他の事でも言えるんだろうなあ。
 

1/16/99

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